水晶購入センター
大多数のヴァイキングのイメージでは、イヴェットは常にほほ笑みを浮かべている。どれだけ大きな困難が訪れても、イヴェットは積極的に立ち向かい、決して怯むことはない。
イヴェットが迷いを抱くこともないわけではない。しかし、彼女に寄り添うハデヴェイヒがいつも、その悩みを解決する手助けをしている。すでに長寿の域に達しているこのシロフクロウは、老いるどころかますます元気になっていく。イヴェットは、ハデヴェイヒの叱咤激励を受けながらすくすくと成長した。聖職者から教えを受けたイヴェットは、当然のようにその潜在能力を開花させた。
イヴェットが精神を集中させて音楽を奏でると、そのゆったりとした旋律は皆の痛みを癒し、彼らの信仰心をより強固なものにする。イヴェットの奏でる音楽が激しくなると、心の底から湧き上がる勇気が戦うヴァイキングを守り、無敵の力を与える。
とある有力な聖職者は生前非常にイヴェットをかわいがっており、いつか自分を継ぐかもしれないと考えていた。
ヴァイキングであれば誰もがラグナーの名前を聞いたことがある。その功績は大陸の至る所で耳にすることができるが、中でも人々の耳目を集めているのは、ラグナーが単独で悪竜を倒す英雄譚だ。
かつてラグナーの故郷には、悪事を働く巨竜がいた。巨竜はヴァイキングの縄張りにのさばり、数多くの家屋や田畑を壊滅させて恨みを買っていた。何人ものヴァイキングの勇者が悪竜退治に赴いたが、消息を絶つか、息も絶え絶えになって帰ってくるかのどちらかであった。巨竜に太刀打ちできた者は一人もいなかった。
人々が絶望に包まれた時、ラグナーが立ち上がり、竜退治という困難な使命を請け負った。ラグナーは、すぐに血をたぎらせ正面から立ち向かっていった他の勇者たちとは違った。まず悪竜の戦いぶりを観察し、どちらが優勢であるかを見極めた。そして、綿密に戦略を練った。ラグナーはたまたま通りかかった旅の魔術師の助けを得て、マントとズボンを土瀝青に浸したうえ、砂地で転げ回って全身を砂だらけにした。そして、槍を手に悪竜に戦いを挑んだ。
戦いが始まるや、悪竜は猛烈にラグナーに突進し、一撃で命を奪おうとした。ラグナーは慎重にその攻撃をかわし、身を守りつつ、手元の槍で着実に巨竜の体に傷跡を付けていった。時間が経つにつれ、悪竜は次第に疲弊し、恐れを感じ始めた。悪竜が背を向けて逃げ出そうとすると、ラグナーはその後を追い、槍を悪竜の急所に深々と突き刺した。悪竜が痛みでもがくと、毒の血が噴き出したが、土瀝青の防具で守られたラグナーはまったくの無傷であった。
悪竜を退治するというラグナーの偉業は大陸全土を揺るがした。そのため、ラグナーは「ドラゴンスレイヤー」という名誉ある異名を授けられた。しかし、ラグナーがそれで歩みを止めることはない。彼は故郷に別れを告げ、ミズガルズの旅に出た。次に帰ってきた時は、さらなる輝かしい伝説を携えていることだろう。
極北は気候が劣悪である。吹雪は年中収まることがなく、気温は極端に低い。そのため、生存のための資源が非常に希少だ。悪名高い「略奪者部隊」は、このような環境の下で生き残るため生まれた。
アックスラッシュ・エリックは、略奪者の大軍の一員だった。斧の扱いに長けた怪力の男で、エリックに逆らおうとした者は必ず痛い目に遭わせられる。エリックは略奪者部隊に付いて我が物顔で極北を歩き回り、同じヴァイキングを殺しては物資を奪った。何度も人殺しを犯していたため、ヴァイキングの人々の間では鼻つまみ者となっていた。
しかし、ヴァイキングの部族の大移動と共に、エリックの運命は大きく変わった。
新大陸に上陸して間もなく、略奪者部隊はニヴルングの大軍に襲撃された。多勢に無勢の状況で、エリックのような勇敢な戦士でさえニヴルングの津波のように激しい挟撃には耐えられなかった。略奪者部隊はほぼ全滅し、エリックを含む数人だけがなんとか生き残った。
暴力で天下にのさばっていた悪人が、暴力で抑え込まれる。それがプライドの高いエリックには受け入れられなかった。ニヴルングに恨みを抱いたエリックは、長い復讐の旅に出た。
「俺の斧はまだ冷めちゃいない。ニヴルングの新鮮な血を欲している」
ヴァイキングの他の部族に村が包囲された時、セシアは部族の仲間たちと一堂に介し、生きるための資源がたっぷりと手に入ったことを祝っていた。燃え盛る矢が村に放たれると、楽しげな声は一瞬で悲鳴に変わった。虎視眈々と狙いを定めていた略奪者が村になだれ込み、残忍なる略取の限りを尽くした。
通りすがりのアイヴァーらが、死体の山の中からセシアを発見した。その傷口からは血が流れ続けており、明らかに死の間際だった。セシアの命を救うため、同行していた呪術医がやむなく、毒液を加えた薬を使った。セシアは一命をとりとめたが、毒の苦しみは永遠に彼女に付きまとうことになった。
回復したセシアは人が変わった。侵略の残虐さを恨み、そしてそれ以上に自らの無力さを、滅びゆく一族を黙って見ていることしかできなかった自分を恨んだ。彼女は戦いの技術を学び始め、毎日繰り返される苦行に耐えた。アイヴァーらが見守る中、セシアは恐ろしいほどのスピードで潜在能力を開花させていった。それに伴い、性格も暴力的になっていった。
悪夢がセシアの精神を痛めつけていた。セシアは感情を戦場にぶつけた。そのため、彼女はアイヴァーの部隊に加わり、戦いが起きるたびに最前線に突っ込んでいった。いずれ彼女は、人々が大陸で最も恐れる悪夢となるだろう。
リンディは謎に満ちた古のスターリング家の出自を持つ。ヨルムンガンドに守られたスターリング家の人々は、蛇語を解し、蛇の魂を操ることができた。リンディはこの能力にとりわけ優れていたため、大蛇の祭司に推挙され、一族を守るという重責を担うことになった。
それまでの石頭な祭司とは異なり、リンディは自身の才能を生かしてさらなる可能性を生み出すことに注力した。リンディは部族に残された数多くの古い文献を渉猟し、極めて強力な毒霧を作り出した。すぐさま毒霧を戦場に投入すると、その効果はてきめんだった。リンディはその結果に大喜びし、蛇毒の研究にさらにのめり込むことになった。
「せっかくの天賦の才だ。とことん使い尽くそう」
ある吹雪の夜、スノッリの部族は侵略に遭った。略奪者たちは夜のうちに忍び込み、物資を奪って村を焼き払った。外出していたスノッリが炎の光を目にして慌てて戻ってきた時には、集落は廃墟と化しており、生き残った者は一人としていなかった。
スノッリは一夜にしてすべてを失った。彼は荒れ果てた村で泣き叫び、助けを求め、そして悔いに悔いた。スノッリは無慈悲な略奪者を心から憎み、そして無力な自分を恨んだ。そこで、スノッリはその恨みを忘れないよう、部族の紋章を全身に刻み、長く苦しい修業を始めた。
「紋章も部族も不滅である」
部族の領袖であるホバートは非凡な力を有している。洗練された戦闘技術、強靭な体、そして怖いもの知らずの勇気を活かし、数々の戦闘で敵を蹴散らしてきた。それでも、ホバートはニヴルングの進攻から仲間を助けることができなかった。
ある夜、卑劣なニヴルング部隊がホバートの部族に奇襲を仕掛けた。ホバートは仲間たちと共に強硬に抵抗したが、部族は大打撃を受け、一族は壊滅してしまった。死体の山から助け出された瀕死のホバートは、短い間だけ悲痛に暮れると、すぐに立ち上がった。勇者たちの魂がすでにヴァルハラに届いていること、そしていつか仲間たちと再会できることを彼は信じていた。
独りになったホバートは傭兵団に加わり、ニヴルングと戦いながら、生き残った仲間を探している。
若かりし頃のアサは旅の魔術師だった。彼の足跡はミズガルズ中に残されている。豊富な経験を積んだことで、アサは慎重かつ果断な性格となった。彼は石橋を叩いて渡ることも、必要な危険を冒すこともできる。
ニヴルングとの戦争が勃発すると、防戦一方に甘んじるのを嫌ったアサは、精鋭の戦士たちを集め、ニヴルングの城に潜入しようとした。しかし、アサはニヴルングの実力を甘く見ていた。ニヴルングはすぐにアサの動きに気付き、迅速に包囲した。仲間を逃がすため、アサは一人で最後まで残り、そして全身を冥界の炎で焼かれることになった。
アサがどのようにしてニヴルングの魔の手から逃れたのか知る者はいない。ただ、人々はあの日、アサが火だるまになって野営地の外に現れたのを覚えている。幸いにも一命をとりとめたアサは、それからしばらく体を休めた。彼は片目と、そして全身の魔力と引き換えに、暴れ狂う冥界の炎を操れるようになっていた。アサは、侵入してきたニヴルングに同じ苦しみを味わわせてやると誓っている。
ヴェルダンディーは部族の中では目立たない存在だった。その痩せた体は近接戦闘においては決して役に立つことはない。よく矢に薬を塗っていたため、仲間から反感を買っていた。一部の頭の固いヴァイキングは伝統に固執し、複雑な状況における戦い方について考えることはほとんどなかった。
ヴェルダンディーが自らの価値を証明したのは、ニヴルングとの戦争が勃発してからのことである。射手たちが普通の矢では屈強なニヴルングを一撃で仕留めることができないと気付いた時、ヴェルダンディーはすでに手製の薬を駆使して敵を次々に倒していた。ヴェルダンディーの矢に射られれば、逃げ切ることのできる者はほとんどいない。彼女はレベッカという賢いオオカミも飼っているからだ。彼女の活躍に気付いた長老会は特別会議を招集し、ヴェルダンディーを精鋭斥候部隊に配属することに決めた。
「ヴェルダンディーは、自分の頭で考えられる戦士だ。古い考えを捨て、自分の長所を生かし短所を隠すことに長けている。彼女を発掘できたことは我々にとって幸運だった」
武器に毒を使うのは往々にして非難を浴びる行為であり、伝統を重んじるヴァイキングの戦士であれば一笑に付すようなことであるが、法律で禁止されていることではないのもまた事実だ。そのため、シーラは堂々と矢の一本一本に「色」を付けている。太陽に照らされると七色に光るこの毒薬は非常に強力で、命中するや即座に効力を発揮する。
武器を手にするまで、シーラは普通の女の子だった。まだ幼く、戦いや狩りができないシーラができるのは、狩人たちの弓の手入れくらいだった。シーラは幼いながらも真面目で、人々はそんなシーラをよくからかっていた。シーラはそれを煩わしく思っていたが、その真剣な様子を皆はおかしく思うのだった。
シーラの運命は、ある吹雪が猛威を振るう夕方に変わった。シーラの一家は、ニヴルングと正面から戦うという首領の決定に反対したため、部族から追放されてしまったのだ。一家は吹雪の中を連日連夜歩いた。ニヴルングの要塞にいた見張りの兵がそのヴァイキングの痕跡を発見したため、一家は敵に追われることになった。シーラは幸いにも生き残ることができたが、家族はシーラほど幸運ではなかった。
シーラは気を失い、付近のヴァイキングの部族に発見された。その部族の族長であるウォルトゥームがシーラを育てた。ウォルトゥームはシーラに薬草の知識を授け、薬の作り方を教えた。しかし、シーラが興味を持ったのは毒薬だった。シーラが説得を聞かなかったので、ウォルトゥームはシーラが集めていた毒物を取り上げたが、シーラは諦めなかった。シーラが隠れて毒薬を作り始めたので、ウォルトゥームの方がやむなく折れた。
シーラは命を奪う毒薬に加え、集中力を高めて興奮状態にする「強壮剤」も作り出した。その薬を飲むと、俊敏に、的確に、そして長時間、敵を殲滅するまで戦うことができる。この薬はシーラが宝物のように大事にしており、その配合方法は長老会にさえ知らされていない。
英雄ぞろいのヴァイキングの中でも、ヴァルカは傑出した人物である。見た目は若いが、少女のような皮の下に強い魂を秘めていることを誰もが知っている。
ヴァルカの神通力は天性のものではない。あの襲撃事件が起きるまで、ヴァルカは普通のヴァイキングの少女だった。当時、ヴァイキングは寒さが厳しい極北の地に住んでおり、部族の間では数少ない物資を奪い合って衝突が絶えなかった。ある吹雪の夜、ヴァルカの部族は襲撃に遭った。混乱の中でヴァルカは仲間からはぐれ、鬱蒼とした森に迷い込んだ。夜の森は極限の寒さで、強い風が刃物のようにヴァルカの皮膚を切り裂く。ヴァルカは生き残るため、歯を食いしばりながら厚く積もった雪の上を歩いて森の奥へと向かい、寒さから身を守ることのできる場所を探した。
大雪で倒れた枯れ木を回り込むと、遺跡が目の前に現れた。すでにがれきしか残っていなかったが、崩れた石柱から、そこがかつてはほこらであったことがわかった。疲れ果て、もはや前に進む気力がなかったヴァルカは、低くなった壁に身を預け神の庇護が得られるよう祈り続けた。
ヴァルカは吹雪の中で生き残った。神の庇護が朝日のように降臨した。昏睡していたヴァルカが目を覚ますと、寒さから隔絶されていることに気付いた。神通力が体の中から絶えず湧き出てくる。全身に力がみなぎるのを感じる。ヴァルカは立ち上がり、神の導きに従って森の外へ出た。
その出来事を経て、ヴァルカは神と交流する能力を得た。それだけではない。月日が流れても、ヴァルカは普通の人のようには老いなかった。ヴァルカは神の庇護に感謝し、神通力を存分に発揮して仲間を助けた。ニヴルングが侵入してくると、ヴァルカはヴァイキングの反抗の戦いに加わり、明かりのように道を照らして導いている。
「神は永遠にヴァイキングを守ってくださいます」
グレゴリーはヴァイキングに生まれていなければ、頭のおかしな芸術家にでもなっていたことだろう。実際のところ、今でも同じようなものだ。グレゴリーが戦場で叩くドラムは、最高の戦争芸術なのだ。
グレゴリーは好戦的だ。自分なりの戦うリズムを確立している。彼は2面の太鼓をその身に携え、敵陣に突入すると斧の柄で太鼓を叩き、耳をつんざくような音を出す。グレゴリーの太鼓の音には、何かの権威のような、あるいは号令のような感染力があり、近くでその音を聞いた人々は釣られて雄叫びを上げてしまう。そして、彼らはまるでグレゴリーによって体内に力を注入されているかのように、激しい攻撃を繰り出し始める。
「私たちにグレゴリーの力を説明することはできない。魔法でも魔術でも神通力でもない。今のところは、彼の才能だと言うほかない」
イェンスの生まれつきの神性は、部族の注目の的だった。部族の人々は、それはオーディンからの賜物であると考えた。そのため、イェンスは幼い頃から森の聖殿に送られ、聖職者たちと共に修業を積んだ。
飛び抜けた才能と真面目な態度で、イェンスはすぐに他の聖職者を凌駕した。成人したイェンスは、有史以来最年少の聖職者となった。聖殿の大神官はイェンスのことを気に入り、細やかに指導した。そして、自身の後を継がせようとしたが、イェンスは大神官の気持ちに応えることなく聖殿を去った。
イェンスは修行を放棄したかったわけではない。反対に、進歩に飢えていた。この時の聖殿はすでにイェンスの知識欲に応えることができなくなっていたため、イェンスはさらなる成長を目指し、故郷に別れを告げてミズガルズを歩き回る長い旅に出たのだ。
これまでの数十年で、イェンスはミズガルズの各地に足を踏み入れた。長年の遊歴で蓄積した経験と知識により、彼は広く名を知られる「大神官」となっていた。
ニヴルングとヴァイキングの間に戦争が勃発すると、なおも遊歴を続けていたイェンスは、オーディンの導きを受け、海を渡って新大陸に向かい、苦戦するヴァイキングに力を貸している。
生まれつき目に刻まれていた蛇の模様により、シグルドは生まれた時から極北中の注目を浴びていた。生まれつき神に守られている、蛇の霊の主だ、いやヨルムンガンドの化身だ……現実離れしたうわさや憶測が飛び交った。ある者は彼を崇め、またある者は鼻であしらったが、いずれにしてもシグルドの一生が決して平凡なものにはならないことははっきりしていた。
実際のところ、シグルドは優れた力を持っていた。蛇のように鋭敏な洞察力と行動力のおかげで、シグルドは同年齢の人間を上回る活躍を見せ、部族の中でも抜きん出ていた。さらに、冷静沈着な性格と強い決断力を備え、戦場では向かうところ敵なしだった。加えて、シグルドには蛇を操る力があった。普段は隠しているが、身の程知らずの人間が彼に襲い掛かれば、舌をチロチロとさせるその爬虫類がどれほど恐ろしい存在であるかを思い知らされることになる。
部族の中では、どこへ行ってもイヴァナの姿を見ることができる。彼女はいつも、苦境に陥った仲間にいつも支援の手を差し伸べ、道を示している。まるで一筋の光のように。
イヴァナは間違いなく人々に愛されている。きめ細かな優しさと、いつもその顔にたたえられた笑顔により、人々はイヴァナに温和な印象を抱いている。
そのため、武装したイヴァナが戦場に現れ、帰り血を浴びながら戦う姿を見た時、誰もが口をあんぐりと開けて驚いた。
極北の雪国で生まれたイヴァナには、優しい見た目とは裏腹に、戦いの才能があった。自律性と意志の強さを持つ彼女は剣の腕を急速に伸ばし、部隊の中でも腕利きの戦士となった。仲間たちに対しては優しくても、戦場に出れば敵に容赦はしない。彼女はアイヴァーに付き従って極北に遠征し、戦いが起きれば最前線に突撃しながらも仲間たちの無事を守る。
ニヴルングの待ち伏せに遭ってからは、イヴァナははぐれた仲間たちを探すことに力を注ぐようになった。前途は多難に満ちているが、楽観的なイヴァナは成功を信じている。
「私は仲間を見捨てない」
ある暗い夜、ニヴルングがラルドの村を襲った。村人たちは強く抵抗したが、悲惨な虐殺を逃れることはできなかった。
ラルドは部族で唯一の生存者となった。聖職者たちが彼を発見した時、彼は死体の山の上に倒れ、冥界の火による苦痛を一人で受け止めていた。炎がラルドの顔を焼き、そしてその意識を奪おうとしていた。若くはかない命を救うため、聖職者たちは速やかにラルドをほこらに連れ帰り、長い治療を始めた。
聖職者たちの懸命の努力により、ラルドの体内の冥界の火はゆっくりと消えていった。彼には天性の神性があったため、思いがけないことに火を操る能力を身に付けることもできた。しかし、顔が元に戻ることはなかった。そのため、彼は鹿の仮面でその恐ろしい顔を隠している。
回復したラルドはほこらに残ることを選んだ。聖職者たちと共に修行を積みながら、苦しむ人々を救いたいと願ったのだ。
「冥界の火はラルドの顔を焼損した。しかし、彼の偉大にして無私なる心を破壊することはできなかった」
QRコード